Mの旅日記 〜アラサー社会人の冒険〜

都会と社会と仕事から逃げるように始めた、アラサー1人旅の記録です

小笠原諸島・父島の冒険・3/4 〜稀少動物と世界自然遺産〜

今回の主たる目的は星空の写真撮影ですが、ここは世界自然遺産の島。
昼は、元生物学者の欲望を満たすべく、天然記念物を含む希少動物の撮影にも挑みました。

出会うことができた固有種などの在来動物

泊まった場所が山の麓だったため、予想以上に多くの動物に出会うことができました!

オガサワラハシナガウグイス(固有亜種)

「ホーホケキョ!」の鳴き声が至るところから聞こえました。
警戒心が弱いため、少し待機すれば、かなり近くまで来てくれます。

オガサワラヌマエビ


みんなでヌマエビを見ているところ

「ボニンブルーシマ」さんのツアーに参加した際に、保護区内で出会うことができました。
幼生の頃は海で過ごし、成体になると島に上陸して繁殖するようです。ヌマエビは、この生態のおかげで広い地域に分布することができます。

海洋センターのウミガメ


えさくれ〜!と言わんばかりのアオウミガメ

アオウミガメ、アカウミガメ、ごく稀にタイマイが、交尾・産卵のために小笠原諸島に訪れます。
小笠原海洋センターでは、調査も兼ねて、ウミガメの飼育・繁殖に取り組んでいます。

また、元日には、父島では海開きのイベントがあり、その一環として、ウミガメの放流があります。今回は、1年4ヶ月、海洋センターで飼育したアオウミガメを放流しました。

オガサワラノスリ(固有亜種)


かっこいい!

小笠原唯一の猛禽類で、小笠原の生態系の頂点にいると思われます。
宿の人の話では、僕が確認できたのは、巣を持っていない若鳥で、小笠原諸島全体で60羽ほどしかいないそうです。
国の天然記念物。

オガサワラオオコウモリ(固有種)


時々顔を上げては、皮膜で顔を覆います

小笠原と言えばこのコウモリ。日没後に、餌を求めて巣から出てきます。
なんと、宿に生えているタコの木に来てくれて、しかも小休憩?していたようで、間近で撮影することができました!
生息数は、小笠原諸島全体で、100〜200頭ほどとされています。顔は犬に近く、超音波でなく、視覚を使います。原始的なコウモリと考えられています。
国の天然記念物。一方で、農作物は食害の被害を受け、悩ましい問題になっています。

会いたかったけど、会えなかった固有種

巡り会えた固有種がいた一方、その生息数が激減し、絶滅の危機に瀕している生物もいました。小笠原の生態系の再生を願います。

アカガシラカラスバト

愛称は「あかぽっぽ」。
卵は1つしか産まず、小笠原諸島には、もともと天敵となる生物がいなかったため、それで十分生存可能でした。しかし、ペットが野生化したノネコによって捕食され、生息数がかなり少なくなってしまったようです。
現在は、保護地区でごく稀に確認できるとのこと。シマさんのツアーで、あかぽっぽの保護地区を訪れましたが、出会うことはできませんでした。
国の天然記念物。

メグロ

小笠原固有種で、現在では母島のみで確認できます(亜種ハハジマメグロ)。亜種のムコジマメグロは絶滅したと考えられています。戦争や開発の影響でしょうか。
今回、母島への渡航も考えましたが、都合が合わず、行くことができませんでした。
国の特別天然記念物

カタマイマイ

ガラパゴス諸島ダーウィン・フィンチに相当する動物です。同じ種であるにも関わらず、その生息地によって、形態や生態が異なります。
父島では、ヒルやネズミなど外来種の影響で数が激減し、特定の地域にしかいないとのこと。
国の天然記念物。

出会った外来動物

世界自然遺産に期待しつつも、目立ったのは、外来種の目撃数でした。

メジロ


動きがすばしっこいため、撮影は難しい!

以前は固有亜種とされていたのですが、近年の調査で、シチトウメジロとイオウジマメジロの交雑種と判明。
父島にはたくさんいました。

ノヤギ

かつて人が食肉用に持ち込んだヤギが野生化したものです。在来植物を食いつくしてしまうため、島の生態系を壊してしまいます。
父島以外の島では駆除が進み、生息数がゼロになったとのことです。父島では駆除活動が今も続いています。
島内の歩道には、ところどころノヤギ侵入防止用の柵が設置してあります。

人の手によって持ち込まれ、人の手によって駆除されるという、悲しい運命にあります。

クマネズミ

すばしっこいため、その姿を上手く撮影できませんでしたが、たぶんクマネズミです。船に紛れ込んでやって来たと考えられています。
夜になると、たくさん出てきて、コウモリの餌であるタコの実を食べていたようです。

グリーンアノール

体色を変えるため、必ずしも緑色じゃないです。ノスリの餌になっているとの情報もあります。

アフリカマイマイ

海洋センター付近にいました。かなりデカく、手のひらほどの大きさがあります。
寄生虫を媒介するので素手で触ってはいけません。

 

世界自然遺産は危機的状況?

2011年に世界自然遺産となった小笠原の生態系ですが、ガラスの生態系と呼ばれているそうです。

およそ4800万年前、火山活動によって小笠原諸島は形成されました。
そこへ、現存種の祖先たちが海流や流木に乗って、または飛来によって、訪れ、定着していきました。
現在に至るまで、一度も陸続きになったことがなく、驚異となる天敵がほとんどいないため、生存競争の少ない固有の生態系が形成されます。

その結果、この島々の在来種は警戒心が弱く、産む卵の数も少なかったりと、非常にか弱い存在になってしまったそうです。
なので、一度、天敵が訪れると、在来種は太刀打ちする手段がなく、一気に絶滅へと追いやられてしまうのです。

特に父島では、人が持ち込んだ外来種によって、あかぽっぽやカタマイマイは激減し、一部の地域でしか確認することができないとのこと。

小笠原の自然を守る活動

小笠原の収入源のほとんどは観光なので、自然遺産から抹消されてしまえば、観光客も減り、収入も減ってしまいます。
そして何よりも、その貴重な生態系が失われてしまうのは悲しいですね。

そうした状況を顧み、小笠原諸島では、 本来の自然を取り戻すため、自然保護活動が行われています。

  • 外来種の駆除(ノヤギ、ノネコ、松の木など)
  • 保護地区の設定(入るにはツアーガイドの付き添いが必須)
  • 外来種の侵入を防ぐためのバリケード設置

ダーウィンが進化論の着想を得たとされるガラパゴス諸島に、その自然環境や歴史が酷似していることから、小笠原諸島は「東洋のガラパゴス」とも呼ばれています。
「地球とは何か」「生物とは何か」を知る上で、とても貴重な島々だなと実感しました。


次は、「島での生活」編です。
planet-odyssey.hatenablog.jp